人生は平坦じゃないんだなぁ。
順当に進んで行った人が坂を転げ落ちたり、不運に見舞われ苦しい苦しい時期を耐えて幸運に見舞われたり。
一寸先は闇か光か。分からないなりに、闇に触れぬように光に向かうように誰もが生きてるんじゃないでしょうか。
この『蝉しぐれ』を読んで、「今の不幸が永遠に続くわけじゃなく、それは人生の彩りのひとつなんだな。」とページから顔をあげ、遠くを見ながら人生の起伏を噛み締めました。
私の心を捉えたのは、もう残りわずかでこの小説が終わるときでした。
「それが出来なかったことを、それがし、生涯の悔いをしております」
「蝉しぐれ」 藤沢周平
毎日あんなに努力して、頑張ってた主人公ですら、1番の望みは叶わなかった。人生の幸運の量は平等かもしれませんが、けっして望んだ幸運をもたらさないのが苦しいところ。
あの時、神様に味方して欲しかった。
この家に生まれなければ、もっと容姿に恵まれていれば。
なぜ何度転職してもクソな会社に当たってしまうんだろう。
思い通りにならないんですよね、ほんと笑
その思い通りにならない人生のなかで、主人公が不遇に根を上げず淡々と己の生き様を貫く。
いま私にはすごい眩しくみえた。かっこいいなって。
私なんか、言い訳ばっかりで、行動もろくにしないし、その割に考えることは大きいし。今日できることを一生懸命せずに、明日を語るばかり。自分が小さく見えて、すごいすごい反省した。
きっと人生は誰もがどこかで、何かしらの後悔する。『ずっと幸せで、ずっと最高だった』なんてのは嘘つきの戯言で、実際はどの人にも辛い時期ってある。
けどその辛い時期、苦しい時、天を仰いで睨みたくなるようなその時に『おれは頑張った』って生き方をしたい。楽しい時だけ頑張れる自分じゃなくて、楽しくない時も頑張れる自分でありたい。
『蝉しぐれ』が私にくれた読書体験は、そんな意志を固めてくれるものでした。病めるときも健やかなるときも私は今日できることを精一杯できる人でありたいです。
藤沢周平さん、素敵な作品を残してくれてありがとうございました。