二十歳のときに読んだ『避暑地の猫』を12年ぶりに読みました。こんなにエロティックな描写多かったっけ?と困惑しながらも、最後まで夢中で読みふけることができました。
名作は何度読んでも、名作なんだなぁ。
今回は、愛情と憎悪、禁断の性欲を描いた宮本輝さんの『避暑地の猫』をご紹介していきます。
結論から言えば、『避暑地の猫』はこんな人におすすめ↓
・少年が狂っていく様を読みたい
・ライトな小説じゃなくて「文学」に触れたい
・ちょっとエロティックな描写に興味ある
・ミステリーが好き
ここからはネタバレなしで、避暑地の猫の感想を伝えていきます。
『避暑地の猫』はミステリー小説っぽい?
明確にジャンル分けされている訳ではありませんが、私はミステリー小説と受け取りました。ストーリーが進んでいくにつれて謎とヒントが少しずつ与えられていくので、どんどん読み進められるのがいいところ。
物語のあらすじを見てみましょう。
清澄な軽井沢の一隅に、背徳の地下室はあった。そこでは全ての聖なる秩序は爛れ去り、人間の魂の奥底に潜む、不気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わすのだ。尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、そして主人公の少年も、そこでは妖しい光を放つ猫となる。だが、この作品で猫とは何か―?
『避暑地の猫』 宮本輝 ーあらすじより
背徳の地下室…!
この時点でなんだかエロティックだし、ミステリーっぽいですね笑。実際、この地下室を軸に妖しくストーリーが展開していくので実に読み応えがありました。
ざっくりあらすじを解説。2つの家族の物語です。
この小説の登場人物は多くありません。他にもいく人か出てきますが、2つの家族のストーリーといって間違いないでしょう。
- 軽井沢の別荘に夏にやってくる金持ち家族(父・母・姉・妹)
- その別荘に住み込みで働く使用人の貧乏家族(父・母・姉・弟)
- サブキャラ(料理人、近所の女の子)
この家族の間にある様々な事情がまぁミステリー。
冷たい金持ち奥さんと美しい貧乏な母。謎の地下室と金持ちな旦那様。
この別荘を所有する金持ち家族と、貧乏家族。それぞれの思惑が、1人のピュアな少年に襲いかかるストーリーになっていきます。狂気にあてられていく少年の描写は大変読み応えがあるかと…。
少年期ならではの思い込みと性欲の描写が巧み
少年期って極端ですよねー。0か100か、白か黒かで考えちゃうというか。私もそんな時代がありました…笑
このストーリーは11歳〜17歳までの少年の視点を通して展開していきます。
無邪気なころから狂気に歪むところまで存分に楽しめるかと…笑。
- 大好きだったものが大嫌いになる。
- 愛情が憎しみに変わる。
- 止められない性的衝動に身を任せる。
- 人の考えを受け入れる柔軟性がない。
その辺の描写が非常に巧みでした。少し傾向は違うかもしれませんが、思春期のお子さんをもっている親御さんは読んでもいいかもしれませんね。
私も読みながら、遠い昔の思春期ならではの性欲について追体験したようでした。激しいマグマを内在している感覚って思春期ならでは。作家さんの巧みな表現を味わうにはもってこいだと思います。
教訓めいた小説じゃない。そこにあるのは好奇心だけ。
個人的に教訓めいたことは一切なく、ただただ好奇心で読み進められる本です。
- この2つの家族がどうなってしまうのか?
- 謎の地下室で何が行われてのか?
- この少年はどうなってしまうの?
ただただ、頭の中にある「?」を解消していくためにだけに読んでました。
というのは建前で、本音をいえば怖いもの見たさに読み進めていたのかもしれません。もう一度あらすじを見てください。
清澄な軽井沢の一隅に、背徳の地下室はあった。そこでは全ての聖なる秩序は爛れ去り、人間の魂の奥底に潜む、不気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わすのだ。尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、そして主人公の少年も、そこでは妖しい光を放つ猫となる。だが、この作品で猫とは何か―?
『避暑地の猫』 宮本輝 ーあらすじより
「背徳の地下室」「不気味な美しさを湛えた悪魔」「妖しい光」などなど、どう考えても美しい話じゃないじゃないですか。
人間の、ある意味人間らしいところ。汚い欲求と見栄や偏見が詰まった作品。
ドロドロした人間たちが最後どんな結末を作るのか?
こっちの興味のために、最後まで駆け足で読めたような気がします。
面白い小説探してるなら『避暑地の猫』はアリ。
ちょっと怖いもの読んでみたいな。汚い人間模様を消化したいな。って方はぜひぜひ『避暑地の猫』はお金をかける価値がある一作。文庫だから安いしね笑。
300ページ弱くらいの小説なんで、1週間は楽しめるはず。
ぜひぜひ『避暑地の猫』を読んで、息を呑むような怖さや、妖艶なエロス、そして少年の狂気に触れてみて下さいな。